ザッ、と足が砂を強く蹴った。いつの間にか僕は河川敷のランニングコース上を走っていた。河口方面が赤く染まり、もうまもなく朝日が昇ろうとしている。
先ほどの戦い。僕たちは敵を倒すのにずいぶん時間がかかった上に、最後はみちるに手を下させ、さらには怪我まで負わせてしまった。
本当は、もうみちるに手を下させたくなかった。今までみちるはずっと一人で辛い思いをしていたのだ。だからこれから苦しむのは僕一人で十分だ。
戦い始めた最初の数回こそはみちるのリードで戦ったけれど。なんならもう、これからはみちるは変身しなくたっていい。僕一人で戦いに出ればいい。
そう、思ってすらいたのに。
なぜこう思うようになったのか、僕自身も上手く説明ができない。彼女も僕も同じ使命を持った戦士であれば一緒に戦えばいいことだし、力を合わせて戦えば、より早く使命を遂行できるかもしれないということもわかっている。そもそも僕はこれまで他人のことを本気で気にしたことなどなかったのだから、今更何故こんな事を考えているんだろう、と思う。
でも、僕は初めてあのロッドを手にしたあの日、思ったのだ。もうこんな思いを彼女にさせてはいけない。彼女を戦わせてはいけない。危険な目に遭わせてはいけない、と。
だが実際はどうだ。みちるを戦わせないばかりか、手を下させて怪我を負わせたのが今日の結果だ……。
思い出すとやりきれない思いが溢れて身体がカッと熱くなり、僕は思わず立ち止まってしまった。明るくなり始めた視線の先には、朝練のために寮から出てきた大学生だろうか、何人かが河川敷に出てきているのが見えた。そのうちの一人が欠伸をしているのが見て取れる。
平和な光景と相反する、僕の生活と心情。やり切れない気持ちになり、僕は目を逸らして河川敷を離れて再び走り始めた。