帰還
はるか、みちるの帰還と共に地球にやってきたのは、二十世紀末に地球にやってきたキンモク星の三人のセーラー戦士、スターライツだった。
「……せい…や?」
はるかやみちるの帰還の知らせを受けて迎え出たクイーンは、一緒にやってきた懐かしい客人に、目を丸くした。
「星野……って、まだその格好してたの?」
セーラー戦士姿ではなく、かつて地球でアイドル活動をしていた時の制服姿で立つ三人を見て、クイーンはそう言った。星野を含め夜天、大気が苦笑いをする。
「お前なあー、久々に会ってすぐにそれかよ。あのな、地球に来る時はこっちの方がいいんだよ」
「僕たちはどっちでもいいけど。星野がこっちがいいって言うからさ……」
後ろでボソリと零す夜天に星野は、ちょっと黙ってろ、と背中を叩く。
「クイーン」
三人の後ろから、みちるがクイーンに声をかけた。隣にははるかもいる。
「はるかさん、みちるさん。ありがとうございました」
クイーンが今回の遠征に対して二人に礼を言うと、みちるは堅い表情のまま軽く頷き、はるかは黙ったまま何も言わなかった。それを見て、クイーンが不思議そうな顔をする。
振り返って二人の様子を見ていた星野が、気まずそうな声を上げた。
「あーっと。ここは俺らから説明するから……みちるサンたち、ちょっと休んでたほうがいいんじゃないっすか」
星野の言葉に、みちるは硬さの残る表情のまま軽く微笑んだ。
「ありがとう。積もる話もあるだろうから、私たちは外させてもらうわ。クイーン、ごめんなさい。またゆっくりお話にくるわ」
「あ……はい」
所在無げに片手を軽く上げ、クイーンは二人を見送った。別れ際の二人の表情に胸がざわつき、不安げな表情で星野の方を見る。
「星野?」
星野はクイーンの表情を直視できないまま、頬を掻き、俯いた。
大きな窓から陽射しの差し込んでくるパレスのゲストルーム。柔らかく明るい雰囲気のその部屋に招かれた星野たちは、クイーンとテーブルに向かい合って座り、事の顛末を話した。ウラヌスが敵との戦いで敗れたこと、それから、火球皇女の力で転生したこと。
「はるかさんが」
クイーンが口元に手を当て、小さな声を漏らした。それから、遠くを見つめるような視線となる。まるではるかとみちるがいる方向を眺めるかのように。
しばらくそうしてから、クイーンは星野に視線を戻した。
「でも、はるかさんとみちるさん……ちょっと様子がおかしかったわ」
クイーンの言葉に、星野は相変わらず気まずそうな、言いづらそうな表情で頬を掻いた。他の二人は何も言わなかった。夜天は椅子に浅く座って足を組んで天井を見つめ、大気は俯いたまま、姿勢良く静かに座っているだけだ。
星野は意を決して口を開く。
「あいつ、多分いま、”天王はるか”じゃないと思う」
星野の言葉に、クイーンが戸惑ったような表情で見つめる。
「どういうこと?」
星野は、深くため息をついた。頭の中には、キンモク星でウラヌスが蘇った時のネプチューンの顔が浮かんでいて、離れなかった。
「あいつは今、スペース・ソードに宿っていたセーラーウラヌスの魂しか持ってないんだ」