気がつくと、天を仰いでいた。高い天井が見える。その見覚えのある光景に、一瞬で僕の身体に緊張が走った。
――マリン・カテドラル。
僕とみちるがユージアルに襲われ、タリスマンを抜かれた場所。僕が意識を失う直前に月野うさぎの背後に見たあの高い天井が、今僕の視界いっぱいに広がっている。
カツ、カツ、カツ……。
僕の足先の方から、硬いヒールでゆっくりと床を歩く音が近づいてきた。僕は慌てて身体を起こす。近づいてきた人物を見て、僕は言葉を失って静止した。
――みちる……。
みちるは、静かにこちらに近づいてきた。薄暗くてよくわからないが、その表情はうっすらと微笑んでいるように見える。
「君は……」
カラカラに乾いた口で、なんとか声を発した。
「本当に、いたんだよな」
すぐにでも立ち上がり、駆け寄りたかった。触れて確かめたかった。しかしなぜか僕は半身を起こし座った状態のまま身体が動かない。
みちるは手に深水鏡を持っていた。こちらに向かって歩きながら、それを僕に向かって掲げる。
「はるか」
みちるが言葉を発した。僕の記憶の通り、優雅で落ち着いていて美しいみちるの声だった。その声を聞くだけで僕の身体の緊張や心の強ばりがが少し解れるような気がしたが、それでも僕はまだ動けないままそこにじっと佇んでいた。
「タリスマンがなんだったか、憶えている?」
不意打ちのその質問に、僕はえ?と声を出すことしかできなかった。本当はもっと聞きたいこと、話したいことがあるはずなのに、なぜそんな情けない声しか出せないのか。
そう思っている間に、みちるはどんどんこちらに近づいてきた。一瞬の瞬きの間に、その姿はセーラーネプチューンの姿に変わっていた。
「タリスマンは……ピュアな心の結晶よ」
ネプチューンは僕の目の前で立ち止まった。
「あなたの中にもあるでしょう」
はっと息を呑む。
ネプチューンは、僕に裏を向けていた深水鏡を表に返した。深水鏡から光が溢れ、僕を照らす。
僕の身体からタリスマン――宇宙剣――が現れた。銃で射抜かれ、無理矢理に取り出されたあの時の感覚とは違う。タリスマンは自身の意思で外に出たがったようだった――。