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Twilight Moon

絆

 九人の戦士とタキシード仮面は、強い力に引っ張られるように空を駆け抜ける感覚を味わっていた。皆、目を瞑り身体を強ばらせ、押し寄せる重力に耐える。

 その強い力が抜けて目を開けると、目の前には白く輝く月が見えていた。十人は月面にふわりと着陸する。


 十人が着陸した場所は、まさしくシルバー・ミレニアムがあった跡地だった。折れた石柱があちこちに立っており、その破片なども月面に数多く散っている。

「なんだか、変な感じがするわ」

 ヴィーナスが両腕をさすりながらあたりを見回す。

「前に来た時と、ちょっと雰囲気が違うね」

 ジュピターやマーズも落ち着かない様子だ。

「やはり、ここに来るとわかるわ。強いエネルギーを感じる」

 マーキュリーがコンピュータを開いた。軽く何かを打ち込み、ゴーグルで周囲の様子も確認する。

「以前にはなかった強いエネルギーの反応があるわね」


 皆がそわそわと周りを眺めて様子を伺っていると、セーラームーンが急に大きな声を上げた。

「あっ!」

 その声を聞いて他の皆がそちらに注目すると、セーラームーンの胸元がキラキラと光り始めていた。そしてまもなく銀水晶が現れ、同時にセーラームーンの変身が解けていく。

「セーラームーン!」

 皆が驚いている中、セーラームーンは光に包まれた。皆が眩しさに目を細めて見ていると、セーラームーンは瞬く間にプリンセス・セレニティへと変化した。

「プリンセス・セレニティ……」

 プリンセスは胸の前に手を広げ、その上には銀水晶が浮かび上がっていた。自身も驚いたような顔でその結晶を見つめている。

「急に銀水晶が反応したわ」

「月の強いエネルギーに共鳴したのでしょうか」

 驚いているプリンセスに、プルートが言った。他の皆も驚き、プリンセスを取り囲むようにして、光を放つ銀水晶を見つめていた。


 皆に見守られながら、プリンセスは両手を高く掲げた。まもなくその手に広がる銀水晶の光は強く眩しくなり、何本もの光の筋が広がり始める。プリンセスの頭上から光の筋はどんどんと長くなり、月を覆うように放射状に伸びていった。

「銀水晶のパワーが月を包み込んでいっているみたい」

 ヴィーナスがプリンセスの様子を見て呟いた。

 筋状だった光は次第に数が増え、皆の上にドームのような形で覆い被さっていく。プリンセスは一心にその手の中にある銀水晶を見つめ、戦士たちは固唾を飲んでその様子を見守っていた。


 プリンセスの様子を見守っているうちに、タキシード仮面も、タキシード姿からプリンス・エンディミオンの姿に変化した。硬い黒のブーツにネイビーの衣装、大きな肩当てにマント姿。プリンスも戸惑ったように自身の変化を見つめていた。

 プリンセス、それからプリンスに変身した二人を中心に、光のドームは厚く濃くなり、ついには頭上はすっかり銀水晶の光に覆われ、宇宙の星々は見えなくなっていった。


「月が、銀水晶の光に包まれたわ」

 マーキュリーがゴーグルのスイッチを入れて周囲を見回し、呟いた。月面は光に包まれて明るく、暖かささえも感じるほどだった。

「これは一体どういう状況なんだ?」

 ウラヌスがプリンセスに向かって尋ねる。プリンセスは銀水晶を上に掲げたまま首を振った。

「わからない……。私は何もしていないのに、銀水晶が……」

 戸惑うプリンセスの横で、マーキュリーがコンピュータを開いて解析をした。まもなくその結果を見て声を上げる。

「銀水晶が強い力で月を覆って、エネルギーを抑えようとしているわ」

 マーキュリーのコンピュータの画面には、銀水晶のパワーにより月から放出されるエネルギーが徐々に抑えられていく様子が映されていた。

「やったわね」

 レイが明るい声で言い、他の皆の表情にも希望の色が見えた。しかしマーキュリーが画面を見つめたまま大きく首を振る。

「いいえ、まだよ」

 マーキュリーがプリンセスが掲げる銀水晶を見上げる。

「月のエネルギーが強すぎるわ。このままだと……」


 マーキュリーが話していると、突然プリンセスを異変が襲った。

「うっ……」

 銀水晶を掲げている手が、何か強い力に押されるように抵抗を始める。プリンセスはそれを頭の上に向かって押し返すように、身体を強く強ばらせていた。

「うさぎ!」

 プリンセスは顔を強ばらせ、腕に力を加えていた。足元にも力が入り、膝を曲げて上からの力に耐えるような姿勢になっていた。


 マーキュリーはプリンセスを気遣いながらも、ちらちらとコンピュータを見る。先ほどまでの状況とは一変して、月のエネルギーと銀水晶の力が拮抗してぶつかり合っていることを映し出していた。


「援護しましょう!」

 ヴィーナスの一声で、皆一斉にプリンセスの周りを取り囲んだ。プリンスがプリンセスの肩を抱き、銀水晶を掲げる腕に手を添える。プリンス以外の戦士たちは周りを囲むようにして手をつないだ。

「うさぎちゃん、頑張って」

「耐えるのよ、うさぎ」

 額に汗を滲ませながら頭上を見つめ続けるプリンセスに、皆が声をかける。

 銀水晶の光が瞬くように揺らいだ。頭上のドームもちらちらと点滅するように変化する。時折光が弱くなったり強くなったりという変化を繰り返し、それはまるで月のエネルギーと戦っている様子を表しているようだった。


「あぁっ!」

 月のエネルギーがまた強く迫ってきたのか、プリンセスが叫び、膝が崩れるように折れかけた。プリンスが背後からそれを支える。

「うさこ」

 プリンスの支えでどうにか体勢を立て直すが、かなり激しく体力を消耗していることが見てとれた。


「私たちもパワーを」

 プルートが言い、八人の戦士は手を繋いだまま目を瞑った。二人へパワーを送るよう心の中で念じていると、各々の身体から光が放たれ、プリンスとプリンセスを囲むように光の輪となる。


 皆のパワーを受け、プリンセスは少し力が戻ってくるのを感じていた。意識が遠のいてしまいそうなほどに強い力に圧倒され、倒れまいと必死に抗う中。

 ふわっ、と心に温かい何かが流れ込んできた。


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