ほたるを含めた三人が恒例の火川神社に到着すると、そこにはすでに亜美以外の内部太陽系戦士のメンバーと衛、それからルナにアルテミスも揃っていた。
「はるかさん、みちるさん、ほたるちゃん」
亜美が真っ先に声を発する。その場にいた全員が、鳥居をくぐって現れた三人に注目した。
「手がかりがわかったんだって?聞かせてもらおうか」
はるかは焦る気持ちを隠そうともせず、早足で境内に入ってきた。みちるとほたるも後ろから続く。
亜美がはるかを見て頷いた。鞄からミニコンピュータを取り出す。その場にいた全員の視線が亜美に注がれる。
「昨日現れた敵のエナジーを調べてみたんです。なぜ今頃になって休眠していたエナジーが活動しはじめたのか……。
それで、地球に向かって発せられている、強いエネルギーが影響していることがわかりました」
亜美はコンピュータを操作しながら話した。ピピッ、という音と共に、解析が完了したことを示す内容が画面に現れる。
「どうやらそれは……月から放出されているみたいなんです」
その場にいた全員が顔を見合わせた。
月……。はるかは上を見上げてその存在を確認しようとした。月が見えてもいいはずの時間帯だが、今は厚く黒い雲が空を覆っていてその姿を確認することができない。
「それで私、レイちゃんにもお願いして占ってもらったり、せつなさんにも連絡を取ってこのことを伝えたんですけど……」
亜美がレイの方を見ると、レイが頷く。
「亜美ちゃんに言われて、私も占ってみました。はっきりとはわからなかったんですけど、確かに月から強いエネルギーを感じます」
「月に敵がいるということかしら」
レイの答えに、みちるが呟くと、レイは軽く首を振った。
「いえ、そんなに悪いオーラは感じないんです……。どちらかと言えば、私たちに近いエネルギーのような……。ただ、そこまではっきりとはわからなくて」
レイはやや俯き、自信がなさそうな表情で話す。
みちるは眉を顰めて、そうよね、と頷き俯いた。先ほど家で確認した深海鏡をもう一度取り出すが、やはりそこには何も映らなかった。
「……どういうことなんだ。悪いオーラもなくみちるの鏡にも映らない。
でも地球にいる敵のエナジーを動かす力がある……」
はるかが考え込むような顔で呟いた。そこにいた全員が答えを出せず、不安げな顔でお互い顔を見合わせる。
せつなは何か言っていなかったか……はるかが亜美に対しそう質問しようとしたその時だった。
「あなたのおかげでいろいろわかりましたよ、亜美。ありがとうございます」
不意に、境内に低く落ち着いた声が響いた。全員が声の主の方を振り返る。
「……せつな!」「せつなさん!」
ちょうど神社の入口、鳥居の真下に、せつなが立っていた。深緑の長い髪が風に靡く。
皆がせつなの方に駆け寄り、出迎えた。せつなはやや疲れた顔をしていたが、優しげに全員の顔を見渡し、微笑んだ。
「ご心配をおかけしました。たった今、私も全てを解明してきました」
せつなの言葉に、その場にいた全員が驚いた顔でせつなを見つめた。
「わかったのか?」
はるかが前のめりでせつなに問う。
「ええ。全て。
……その前に、プリンセスにお尋ねしたいことがあります」
せつなはうさぎの方を向いた。先ほどまで微笑むような表情だったせつなが、やや鋭い表情に変化し、うさぎを見つめている。
指名されたうさぎははっとして答えた。
「は、はい」
「あなたが持っている幻の銀水晶……どのように作られたものか、ご存知ですか?」
予期せぬ質問に、うさぎは混乱する。
……いや、うさぎだけではない。その場にいた全員が、まさか今銀水晶の話が挙がるとは思わず、戸惑っていた。
「銀水晶が……どのように作られたか……ですか?」
うさぎがせつなに問われたままに返すと、せつなは頷く。
うさぎは自らのコンパクトを取り出した。初めて自分がセーラームーンとして覚醒してからずっと自分と共に歩んできた銀水晶が、中心に埋め込まれている。途中で奪われたり持ち去られたり崩壊したり、多くの困難に遭いながらも、うさぎと共に生きてきた銀水晶だ。
強大な力を持つその結晶は、今はコンパクトの中でその力を抑えられ、静かに眠っている。
「えっと……最初に持っていたのはクイーン・セレニティなので……どうやって作られたのかは、ちょっと……」
うさぎは戸惑いながら返答する。うさぎの足元で、ルナとアルテミスも囁き合った。
「そういえば銀水晶って、どうやってできたのかしらね……?」
「僕達も聞いたことがないな」
せつなはうさぎの答えに、静かに頷いた。
「そうですよね……。では、私が知っていることを……時空の扉の番人をしていた頃に伝え聞いたお話なのですが……それをお話ししましょう」
全員がせつなの発言を、固唾を飲んで見守った。