「面倒なことになったな」
はるかは手元のメモを見ながらため息をついた。
はるかとみちるは敵と遭遇した後、急いで他の戦士にも連絡を取った。
するとその日のうちに、まことの勤務する菓子店がある商店街、美奈子が出演したコンサートのステージ、そして次の日にはほたるが通う高校、うさぎの勤務先の保育園……とそれぞれの場所で同様に敵が出現したことがわかった。
「二日間で五箇所も敵が現れたのね」
みちるははるかが手にしているメモを覗き込んだ。それぞれが敵と遭遇した場所と時間、敵の姿形などが走り書きされている。
「まったく、こんな時に……一体なんだっていうんだ」
はるかが顔を歪めた。メモを持つ手にも力が入り、くしゃり、とメモが歪む。
それぞれの敵の情報を書き並べてみたが、どれも特徴がバラバラで関連性が見出せなかった。内部太陽系戦士達がかつて戦ってきた敵に似た姿のものもいれば、はるかやみちるが戦士として覚醒してから、タリスマンを探す過程で戦ってきた敵に似たものも出現している。
「せつなの読みが正しいとすると、地球に残っていたエナジーがなんらかの影響で暴走した……ということね。それがどんな影響なのかわかればいいのだけど……」
みちるは深海鏡を持ち出してきて、覗き込んだ。そのまま数十秒間待っていたが、落胆した表情で静かに首を振る。
「何も映らないわ」
傍で見ていたはるかとほたるも、残念そうな面持ちになった。
――プルルルル……
三人が黙ってメモを見つめていると、突如、リビングに電話の音が響き渡った。三人は一斉にそちらを向く。
電話に一番近いところにいたほたるがさっと立ち上がり、受話器を取った。
「はい。……ええ、そうです。はい……えっ、本当ですか?」
ほたるは答えながら、はるかとみちるの方をちらりと見た。何か言いたげな様子に、二人も思わず電話に耳を欹てる。
「わかりました、二人にも伝えますね。では……」
ほたるは受話器を置いて、はるかとみちるに顔を向けた。電話口では落ち着いた口調だったが、振り返ったその表情はやや興奮しているように見えた。
「亜美さんが……手がかりがわかったかもしれないって」
はるかとみちるは驚いて顔を見合わせた。それから互いにうなずく。
「すぐに行こう」
「行きましょう」