あとから思えば、二人は何かに導かれそこに辿り着いたのかもしれない。
はるかとみちるはまず火川神社にやってきた。行先の当てがなかったので、うさぎを含めた内部太陽系戦士たちがよく集まっていた場所を訪れることにしたのだ。と言っても到着したのは平日の昼間だったから、学校生活を送る彼女たちはこの時間にはまだいないだろうと予想していた。しばらく待ってみるか、何となく様子を見て帰るか。その程度の気持ちでの寄り道だ。
「はるかさん、みちるさん」
そこで声をかけてきたのは、意外な人物――人物と言うのは正しくないかもしれないが――だった。
「きみは」
「ルナ」
はるかとみちるが同時に声を発し、足元を見た。月から遣わされうさぎの傍につく、三日月模様を額に持つ黒猫。最後に見た時と変わりない姿でそこにいた。
そしてルナと共にいたのは、彼女よりもさらに意外な人物だった。近づいてきた足音に顔を上げ、はるかとみちるは目を丸くする。
「衛さん」
やあ、と片手を挙げ、衛は会釈した。
「久しぶり、だな」
突然の再開にはるかとみちるは驚き顔を見合わせたが、察しのいいみちるがすぐに気づき口を開いた。
「あなたたちがここにいらっしゃるの……偶然ではなさそうね」
みちるの言葉に、衛とルナが頷く。
「はるかさん」
ルナがはるかの前に一歩踏み出し、見上げながら言った。
「あなたが持つ宿命について、お話させてください」
はるかはハッと息を呑んだ。みちるも、ルナを見つめたまま目を瞠る。その表情から、ルナは二人が宿命について知っていることを悟ったようだ。
「きみは、知っているんだな」
はるかの問いに、ルナは静かに頷く。
「宿命が巡ってくると、わたしの元にも知らせがくるの。はるかさんの身体が変化したことも知っているし、前世で何があったのかも知ってるわ」
それは、つまり――――一瞬で、昨夜蘇った記憶がはるかの脳内を駆け巡った。恍惚するネプチューンの表情が思い出され、はるかは思わず赤面しそうになる。
「えーと…………、言葉にしづらいことまでここで話す気はないわ」
ルナははるかの様子に、察したかのように首を振り、コホンと軽く咳払いをした。
「わたしが伝えたかったのは、前世でクイーンが何を思い、宿命の任務を与えたのか。そしてその結末がどうなったのか、よ」
ルナの言葉は、はるかとみちるの間の空気を確実に動かした。それは、前夜から二人が疑問を抱き、知りたかったこと。手がかりを得るためにやってきた十番街で、導かれるように出会ったルナと衛が、その鍵を握っている。
「……聞かせてくれるか」
はるかの言葉に、ルナは自らの額の三日月模様を示した。
「あなたの中から消された前世の記憶を見せるわ」
ルナは、かつて内部太陽系戦士たちが戦士の記憶を失った時や、セーラームーンに前世の記憶を復元させた時と同様に、はるかとみちるの二人に前世の記憶を投影して見せた。