少し間があって、ふふっ、とみちるが笑った。きらきらと光る瞳が僕を写している。
「ばかね。さっきまで一緒にいたのに」
みちるが門扉の鉄柵に手をかけた。
「でも、ありがとう。私もはるかに会いたかった」
僕は門扉に一歩近づいて、手を伸ばした。少し迷って、みちるが握る鉄柵の一つ隣を握りしめた。
しばらくそうしてみちるのことを見つめていた。一瞬だったような気もするし、ずいぶん長い時間が経ったような気もする。すうっと足元を風が抜けた。いつの間にか、先程まで感じていた言いようのないもどかしさが消えていることに気づいた。
我に返って、僕はみちるに声をかけた。
「ごめん。急に来て、驚かせたね。もう中に入ったほうがいい」
僕の言葉とみちるも頷いた。
「そうね。あなたも身体が冷えるから早く帰ったほうがいいわ。また……あとでね」
みちるに見送られ、僕は来た道を歩き出した。
夜が明け、動き出した街。僕とみちるが夜中にひっそりと戦い、守られた街。今日もまた一日が始まる。
もう風も、僕の胸も騒いでいない。来た時より幾分か気持ちが軽くなっていた。先程まで鉄柵を握っていた手がまだ少しひんやりしている。ぐっと拳を握った。
昇ってきた日を背に受け、僕はもと来た方へ歩き出した。