帰宅したら、空が白み始めていた。舌打ちをしたい気持ちを抑えつつ、静かに帰宅する。
先程まで、僕とみちるは敵と戦っていた。まだ二人で戦うようになって一ヶ月も経っていない。みちるの方が戦い方は慣れているが、僕も持ち前の運動神経で必死に食らいついている。
……つもりだった。先程までは。
今日の敵はとても機敏な動きで僕らを翻弄した。追えばすかさず逃げる、かと思えば急に止まって攻撃を仕掛けてくる。俊敏に避けるから、技を繰り出そうにも当たらない。ずいぶん遠くまで追いかけたし、多くの物を壊してしまった。
その過程で僕もみちるも、何度か攻撃を受けてしまった。僕が先に左腕を。最後はみちるの攻撃で倒したのだったが……よりにもよってその時にみちるも右腕を怪我してしまった。
長時間の戦闘の末、疲れて油断した敵をどうにか倒した時には、戦闘を始めてから数時間が経過していたというわけだ。
「……くそっ」
自室の机に拳を打ち付けた。その先に伸びる腕に、生々しい傷跡が見える。
一晩中戦っていたから疲れてはいたが、目が冴えてしまいそのまま休む気にはなれなかった。クローゼットからウェアを引っ張り出して着替え、外に出る。そしてそのまま行先を決めずに走り出した。