……いったいこれは、どういう状況なんだ?
はるかは身を起こそうと片肘を立てると、みちるがそっとはるかの肩を手に取り、ソファに沈めた。さほど強い力ではなかったが、そのままみちるがはるかに胸元を預ける形でのしかかってくる。
「みちる?」
頭の中を混乱させたまま、はるかはみちるを抱きとめる形になった。みちるはもう一度はるかに唇を重ねる。先程までの啄むような優しい口付けから、より強く。みちるの身体が密着していることもあり、はるかの鼓動が一気に跳ね上がった。お互いの熱と鼓動が直に伝わり合う。
みちるはそのままはるかに舌を差し入れた。なすがままに受け入れたはるかの口内で、みちるの舌がはるかの舌にぶつかり、絡み合う。
いつもははるかがリードする形で絡むその舌も、今日はみちるが積極的にはるかを探し出し、迎えていく。はるかの舌のラインをみちるが優しく舐め取り、名残惜しむように唇が離れた。
「はるかは……」
唇を離してから、しかし顔はまだはるかに寄せたまま、みちるが囁くように呟いた。
「はるかはいつも、こんな気持ちなのね……」
「え?」
みちるは熱っぽい瞳ではるかを見つめる。
「はるかのことを見ていたら、もっと、触りたいと思って……。ダメかしら」
突然の告白に驚き、はるかは目を見開く。みちるは冗談を言っている様子はなく、ただ恥ずかしそうに頬を染めたまま、はるかを見つめていた。
「ダメじゃ、ないよ。ただ……なんだろ、ちょっと恥ずかしいな」
「そう……よね」
みちるが申し訳無さそうにするので、はるかはみちるの背中に手を回して言った。
「でも、嬉しいよ。みちるがそういう風に言ってくれるの」
本当?とみちるが聞くと、はるかが頷いた。
はるかの肯定の返事を受けて、みちるはもう一度はるかに唇を重ねた。今度は短めに一回。それから、はるかのラフなTシャツの上から胸のラインをなぞる。揉むとか、刺激を与えるとかではなく、みちる自身が確かめるような手つきで。
それからおずおずとTシャツの裾の下に手を入れ、下着の上からその形を確かめた。
「なんか……」
はるかが苦笑いしながら呟く。
「くすぐったい、な」
みちるも思わず苦笑して、そうよね、と呟き、Tシャツを捲くり上げた。シンプルな下着に、ハリのある形のいい胸元。みちるは下着を緩め、その膨らみを顕わにした。そしてツンと立ち上がった先を指で確かめた。
はるかは、恥ずかしさと身体の内側から迫る奇妙な感覚に、うっすらと顔を歪めた。
みちるははるかの顔を目の端に捉えながら、ゆっくりと先端を口に含んだ。最初は舌先で形を確かめるように撫でて。それから転がす。
「……はぁっ」
ぞくぞくとした感覚が身体を巡り、はるかは今度は耐えきれずに息を漏らした。自分の中に熱が生まれているのを感じていた。みちるははるかが反応していることを確認しながら、今度は吸うように刺激する。
「うっ……なんか、変な感じ、だ……」
みちるの背中に回されたはるかの指に、少し力が入った。
片方の乳房を舌で刺激し、もう片方を指でなぞる。みちるから与えられる刺激に、はるかの熱を持った息が、たまに口端から漏れ出る。
どちらかといえば違和感に感じていた感覚が、次第に自分の中心を刺激し、ぞくぞくとした快感に変わっていく。言葉では言い表し難いその感覚が、次第にはるかの頭をぼーっとさせていった。
みちるがはるかの胸元から顔を上げた。躊躇いがちにはるかの顔を見る。はるかは何も言えず、腕で顔を隠した。
「……嫌だったかしら」
「そうじゃない……けど、僕が僕じゃないみたいだ」
そうよね、とみちるは頷く。
「でもね、はるか」
みちるははるかの髪をそっと梳くように撫でた。
「あなたが、いつもしてくれていることよ」
みちるは愛おしむような表情で呟いた。
みちるは身体を少しずらし、はるかが履いているショートパンツに手を伸ばした。はるかは顔を赤らめ、しかし止める様子もなくみちるの所作を眺めていた。みちるはショートパンツの隙間に手を差し入れ、下着の上からはるかの中心部分を確かめる。そこがしっとりと湿っているのは、下着の上からでもみちるの指に伝わってくる。
さすがにそこを直接触れるのは躊躇われて、みちるはもう一度遠慮がちにはるかの顔を覗き込んだ。互いに慣れないことをして恥ずかしさと戸惑いでいっぱいで、いつもは絶対見せない表情をしている。だけど、そこで手を止める気も、止めさせる気もなくて。
はるかがこくりと頷いたのを合図に、みちるはショートパンツと下着をずらし、そこを顕わにした。抵抗……ではないが、羞恥心からやや内向きに足を閉じているはるかに、無理のないように優しくそれらを外す。そして、細い指で中心を撫でた。
「……あんまり、見られたくないな」
はるかがぼそりと呟いた。
「大丈夫。……私は、はるかがどんな姿でも、好きよ」
みちるはそう言って、はるかの中に指を差し入れた。
温かく柔らかなそこは、みちるの指を受け入れ、包み込んだ。みちるはゆっくりと内側を撫でる。先程までとは異なる違和感に、はるかは顔を歪めた。
「はるかの中、あったかいわ……」
みちるは、先を急がずにゆっくりと手を動かした。左手をはるかの手に絡ませる。はるかがみちるを受け入れるのをじっくりと待ちながら、みちるははるかの中を探るように刺激し続けていた。はるかの吐息が徐々に熱くなるのを、みちるは感じ取っていた。
十分に慣らされてから、みちるはもう一本指を差し入れた。はるかの身体がぴくりと反応し、顔を歪めた。しかし決して拒絶の表情ではなく、どこか恍惚としているのが見て取れる。みちるの指をすんなりと受け入れたそこは、充血して熱を持ち、みちるのことを掴んで離さなかった。
「ぅ……あっ……」
先程よりも明らかに強い刺激になり、はるかが声を漏らす。戸惑いと、快感。いつしか違和感を快感が上回り、はるかは完全にみちるに身を委ねていた。
みちるははるかの中を、先程よりも少し速く、でも決して傷つけないような優しさで、かき混ぜる。それはまるで先程までのマッサージと同じで。強く激しい力ではないけれど、ポイントを押さえて刺激をする。
「あ……はぁっ……みち、る……」
息を荒らげ、みちるの名を呼ぶ。絡めた右手をぎゅっと握り、左手はみちるの肩を掴んだ。
スポーツカーがグイグイとスピードを上げるような、どこかへ引っ張られていくような、そんな感覚がはるかを襲う。
もはや恥ずかしさを気にする余裕もなくなり、与えられる快感のままに乱れる
「みち……あっ……はっ……」
はるかの声がより一層強くなり、繋いだ手にぎゅぅっと力が籠った。みちるはそれに気づいて、はるかが一番反応した箇所を刺激した。
「はるかっ……」
「う、ぁっ、あぁ……みちるっ、あぁぁっ」
はるかの全身に力が入る。その手で、中心で、みちるを強く掴んで離さないまま、はるかが達した。
肩で息をするはるかの上に、みちるがそっと身を寄せた。激しく脈打つ鼓動が聞こえてくる。それが鎮まるまで、みちるはずっとはるかの胸元に耳をつけて聞いていた。
しばらくそうしていたら、はるかがみちるの頭に手を置いた。じっとしているみちるの髪を、はるかが指で持ち上げ、梳く。
「みちるがあんなことしたの、初めてだ」
ぼそりとはるかが呟く。みちるがその声を捉えて、顔を上げた。
「あら、はるかこそ」
みちるはいたずらっぽく笑う。
「でも言ったでしょう?
……私ははるかのどんな姿でも、好きよ」
耳先まで赤く染まったはるかに口付けて、みちるはふふっ、と笑った。