もう一度、はるかはみちるに深く口付けた。ワインの味は先程より薄くなったが、まだほんのりと苦味が残っている。みちるの息遣いが先程よりほんのり熱くなってきていた。
はるかは一度身体をゆっくり起こし、テーブルにおかれていたワインをもう一度口に含んだ。それを今度はみちるの口元ではなく、首筋に押し当てた。
「……あ」
不意打ちに、思わずみちるから息が漏れた。ひんやりとしたワインと温かなはるかの舌が、絶妙なコントラストでみちるの首筋を這う。
ぞくぞく、と身体に電気のような感覚が走り、みちるは思わず身を捩った。くすぐったさと快感と、両方の感覚がみちるに押し寄せる。
「っう……ん」
ふいに鎖骨に近い首筋にちくり、と軽い痛みを感じた。はるかの仮装のせいだろうか、みちるにはそれはまるで血を吸われているかのような感覚に思えた。そう思いながらはるかを見たら、目が合った。
―仄暗い部屋で、その目はもう、血に飢えた吸血鬼にしか見えなくて。
「もう逃げられないよ」
耳元で囁かれた声に、みちるは架空の物語の囚われた姫を思い、目を閉じて身を任せた。
はるかはケープをめくり、中に着ていたブラウスの上からみちるの膨らみに手を当てた。ブラウスの上から固い芯を探して、指でなぞる。それからブラウスと下着をたくし上げて、先程なぞっていた中心を舌で軽く啄くように撫でた。
「……んっ」
温かい舌に触れられて、またみちるが甘い息を漏らした。
「ワインとみちる、合うんだよな」
はるかは新しい遊びを覚えた子どものような顔をして呟く。まだ少しワインの残ったグラスに手を伸ばした。
「ブラウスが……汚れるわ」
「これは失礼。ちゃんと脱がさないとね」
「もう。そういうことじゃっ……」
みちるの制止は厭わず、はるかはさっさとケープを外し、ブラウスと下着を取る。自分の服も同じように取り去ってから、改めてワインを口に含み、胸の蕾を強く吸い上げる。
「……はぁっ……ん」
赤く染まった中心部を吸い、そして時々零れそうになる雫を舐め取り、水音を立てながら、はるかはみちるに刺激を与え続けた。みちるの呼吸が荒くなり、熱を帯びてくる。いつの間にかみちるの胸元はワインまみれになっていて、肌から生まれる熱と共に香りを放っていた。
「はる……かっ……」
みちるがはるかの名前を呼ぶのを合図にしたかのように、はるかはみちるの下腹部に手を伸ばした。先程までのパーティの名残で、みちるにしては珍しく短めのスカートを履いていて、その手はすぐに足元からスカートの中に潜り込む。ストッキングと下着の上から中心を撫で、そこがもうすでにはるかを受け入れる準備ができていることを確認した。
はるかはみちるが身につけていた残りの衣服を丁寧に脱がせて、みちるを露わにしてから、グラスに残っていた最後のワインを口に流し込んだ。そして迷うことなくみちるの中心に口をあてがう。
「あっ……やっ……はる、そこはっ……」
みちるが抵抗する隙を与えずに、はるかは一気にそこを攻め立てた。みちるから出る蜜と口に残ったワインが、はるかの舌によって混ぜられる。はるかは壺に舌を差し入れ、固く尖った部分に吸い付いた。
「ああっ……だめっ……やっ……」
一気に与えられた刺激に、みちるの頭が真っ白になっていく。必死でソファの端を手でつかみ、迫りくる波に飲まれないように耐えていた。
みちるの喘ぎが一段と高くなったのを感じたので、はるかは一旦口を離し、残った蜜を舐めとるように舌を這わせてから顔を上げた。艶やかに濡れた口元が妖艶に光る。
「おいしかった。ごちそうさま」
みちるの耳元でそう囁くが、みちるには応える余裕は残されていない。
「いくよ?」
はるかは今度は細長い指をみちるの中に差し入れて、ゆっくりと掻き混ぜる。先ほどまでの刺激で、もうそこはとろとろに蕩けていて、すんなりとはるかを受け入れた。
「あっ……はるかっ……ああっ」
みちるの声が上がり、腰が跳ねる場所。はるかはそこに優しく刺激を与える。
「もう……だめ……」
焦らされるような刺激に、みちるはつい声をあげてしまう。
「……いいよ」
はるかは声をかけると同時に、指の動きを強めた。
「あっああっ……やだっ……あぁっ……」
果てる直前に目の端で捉えたはるかの表情は、もう吸血鬼のような鋭い目線ではなく、いつもの優しい目に戻っていた。
それを確認した直後、みちるの身体にぎゅうっと力が入る。はるかの背中にしがみつきながら、みちるは達した。
「う……ちょっと飲みすぎたな」
シャワーを浴びに行こうと立ち上がったはるかは、頭を押さえて再びソファに座り込んだ。
「あんなに飲むから……」
みちるはやや呆れ顔で言う。
「美味しかった。ワインも、君も」
はるかは恥ずかしげもなくそんなセリフをさらりと言ってのける。みちるは目を逸らし、もう、とだけ呟いて返して、窓の外を見つめる。
満月はもう、角度を変えて見えなくなってしまっていた。