時刻は午前零時を回ろうとしていた。パレスの二階にあるゲストルームを宛てがわれた星野たちは、部屋で思い思いの時を過ごしていた。
「せーやー。いい加減寝ようぜ」
「そうですよ。私たちは今回遊びに来たわけじゃないですから。明日には帰らないといけませんし」
夜天、大気が、バルコニーから外を眺めていた星野に声をかけた。星野は小一時間この状態だった。
「俺のことはいいから寝てて」
「そうはいきませんよ。星野は地球に来ると寝坊する傾向にありますから」
星野は投げやりな返事を二人に向けてから、また外を眺めた。
夜天、大気も日中の出来事には少なからずショックを受けていたせいだろうか、それ以上は何も言わなかった。
月明かりに照らされたクリスタル・トーキョーの街並みを見ていると、静かな海の底にいるような感覚になった。昔訪れた時はもう少しうるさい印象があったが、ずいぶん変わったらしい。
星野の頭からは、昼間に話したクイーンの表情がずっと頭に貼り付き、離れなかった。
「おだんご……」
自分たちが地球へ来て、彼女に会う資格があったのか。あのような顔をさせてしまうくらいなら、来ない方がよかったのではないか。そんな思いが星野の頭を何度も巡っていた。
ウラヌスが力尽きる間際に、彼女に会いに行くよう言われていたということもあるが、もしそうでなかったとしても、彼女にはきちんと説明し、礼と詫びを伝える義務があると思っていた。
しかし、自分たちがそれを伝えにきたことは本当に正しかったのか。
クイーンの表情と、キンモク星での戦いの光景が繰り返し頭を巡り、延々と時間だけが経過していた。まだしばらく寝られる気がしないな、と星野はため息をつく。
ふと、視線を感じて下を見ると、人影が見えた。じっと目を凝らすと、そこに居たのは意外な人物だった。
「お前……」
星野が呟くと、相手は片手を上げた。
「ちょっと、いいか」