クリスタル・トーキョーの中心にそびえ立つ、クリスタル・パレス。はるかとみちるは、数週間ぶりにそこに足を踏み入れた。
「はるかさんみちるさん。お久しぶりです! すみません、わざわざ来てもらっちゃって」
二人を招き入れたのは、現在のクリスタル・トーキョーのクイーンである、ネオ・クイーン・セレニティ。つまり、二十世紀の月野うさぎ。
「やあ。変わりないかい」
「こんにちは、クイーン」
はるかとみちるは、微笑んでクイーンにそう返した。
二十世紀末、地球は大異変により、永きに渡って眠りに就いた。地球のみならず、そこに暮らす全ての生物が仮死状態となり、一切の生命活動を停止したまま千年近く時が過ぎた。
その仮死状態を解いたのは、銀水晶だった。うさぎが持っていた銀水晶は数百年の間静かにじわじわとパワーを発し続け、ついにうさぎを目覚めさせるに至ったのだ。
地球で最初に目を覚ましたうさぎは、地球のコールドスリープを解除すると共に、ネオ・クイーン・セレニティとして覚醒し、地球を統べることとなった。
人々は、銀水晶のパワーで不老長寿となった。
もっとも、コールドスリープより地球が目覚めてからまだ数年。実際にどれだけ長く生きられるのかは今の時点では正確にはわからないし、確認できるのもまだ少し先のことだ。
ここまでは、二十世紀末にうさぎたちセーラー戦士が、三十世紀のネオ・クイーン・セレニティや、当時のセーラープルートから聞いた話と同様の未来だった。しかし予定していた未来と異なっている点が一つだけあった。
それは、うさぎはクイーンとなるにあたり、「二十世紀の頃と同じように暮らしたい」という願望を口にしたことだった。キングと共にクイーンとして地球を統べる立場になるよりも、普通の女の子「月野うさぎ」としての日常生活を送り、非常時にはセーラームーンとして二十世紀の頃のように他の戦士と同じ立場で戦う……そんな生活を望んだのだ。
この願望は、地球が復活する際に一般市民にも戦士や銀水晶の存在が認知されてしまったことで、叶えるのが難しくなってしまった。そのためうさぎはクイーンとして生活することを余儀なくされたのだが、他の戦士やかつての友人とは変わらぬ関係性での付き合いを保っているし、他の戦士たちにも戦士以外の生活も大事にして欲しいと伝えていた。
そこで冒頭に戻るが、はるかとみちるも、二十世紀の頃の「天王はるか」と「海王みちる」としての立場や生活を保ちつつ、戦士としての役目も担っていた。クイーンとの関係性も二十世紀の頃と変わらないまま、今に至る。