まだひくひくと疼くそこからゆっくりと顔をあげると、顔を上気させ、息を乱したみちるが横たわっていた。目尻には涙が溜まり、眠る前に整えたであろう髪もぐちゃぐちゃに乱れている。
僕はその髪をそっと撫で、唇に軽いキスを落とした。
「ごめんね……みちる」
みちるがこちらを見る。その表情は愛おしくて、儚げで、僕はぎゅっと胸を掴まれた。みちるの視線で、燻った炎がまた燃えるように、僕の身体が熱くなる。
「もう君に、悪夢なんて見させないよ」
先ほど散々つけた赤い跡を、指で撫でた。みちるの肌は熱を持ち、触れると僕を誘っているのではと錯覚してしまう。
自分で残した跡がやや痛々しく感じられ、僕はせめてもの償いをと、鎖骨と胸元にある跡を順々に舌で舐めていった。
落ち着きかけたみちるの息が再び乱れ始める。僕は右手を下腹部に伸ばした。
さっき僕がたくさん愛おしみ、味わいつくしたそこは、僕が捉えきれなかった愛液を溢れさせたままでいた。それらを指で掬い取りながら、中にするりと指を潜りこませる。
ぬるりとした感覚と、柔らかな壁が僕の指を圧迫した。ゆっくりと奥まで探ると、僕を掴むようにしっかりと包み込んでくる。僕はみちるの右手に自分の左手を絡め、みちるの顔を覗き込んだ。みちるは恥ずかしがるかのように顔を横に背けた。
「今度は、みちるの顔を見せて」
みちるはちらりと視線だけをこちらに寄越し、それからゆっくりと顔を向けた。潤んだ瞳と余裕のなさを物語る表情を見ていると、僕の中でまた何かが沸き立つ。
軽い口付けを交わし、今度はみちるの顔を見ながら、僕は中に入れたままの指をゆっくりと動かした。みちるの顔が歪み、口端から吐息と小さな喘ぎが漏れる。みちるは空いた手で自らの口を塞いだ。
「さっき散々鳴いたじゃないか……もっと聞かせてよ」
「んっ……かお、見られてると、恥ずかしいの……」
くぐもった声と吐息が、指の隙間から漏れる。羞恥し声を抑えようとする仕草が、僕を余計に燃え上がらせることを、みちるは知らない。
指を出し入れし奥を突くたびに、みちるが何かに耐えるような、それでいてどこか恍惚した表情を浮かべるから、気持ちが昂っている僕は焦って動きを早めないようにするので精一杯だ。
指をもう一本入れてみる。明らかに強くなった刺激にみちるが声を漏らした。目を瞑り、繋がれた手にぎゅうと力が入る。
さっきあれほど高められて乱れていたみちるは、少し刺激するだけで身体を震わせ、また僕を求める。
「こっち見て、みちる」
「ああっ……んっ・・はるかっ……」
うっすらと開けられたみちるの目から涙が溢れ、こぼれ落ちて線となる。口を塞いでいる手は申し訳程度に覆い被さっているだけで、もはや意味を成してはいない。みちるは高く鳴き続けていた。
一度達したみちるの身体は、いとも簡単に昇りつめていく。二本の指を入れたまま、親指で蕾を押しつぶすように刺激した瞬間、みちるは体に電気が走ったかのようにびくびくと震わせた。
「ああぁっ、だめっ」
震えるみちるの最奥に指を擦り付け、動きを早めたら、みちるが繋いだ手をより一層強く握りしめた。口元に置かれていた手はついに行き場を失い、みちるは僕の肩に手を伸ばす。みちるが力を込め、食い込んでくる指先から僕を求めているのが伝わってきた。だからその痛みすらも愛おしく受け入れる。
――みちるの中が僕でいっぱいになるように……
そう思いながら、みちるの中に入った右手と、繋がれている左手に力をこめた。みちるはまるでそれに呼応するかのように、全身で僕を飲み込む。強い刺激とともにみちるの身体が震え、高く響き続けた嬌声が途切れる。
繋がれた手、肩、そして僕の指を包み込んでいる中心部……僕と繋がる全ての部位で、みちるは僕をぎゅうっと強く掴み……僕はみちるが頂点に達したのを感じた。
僕も二度目の達成感を感じ、みちると繋がったまま、身体を重ねるように崩れた。
目を覚ますと、部屋が薄明るくなり始めていた。みちるは素肌のまま僕に身を寄せていて、穏やかな顔で眠っている。
愛おしい表情。昨晩悪夢を見た後のみちるとは大違いだった。白く艶やかな頬が、朝の光を受けて輝いていた。
しばらく眺めていたら、みちるがゆっくりと目を開ける。僕を見て、優しく微笑んだ。
「おはよう、お姫様。いい夢は見られた?」
みちるは僕の問いにぽっと頬を染め、はにかんだ。
「あなたに抱かれた後は、いつも甘い夢を見るわ……」
そう言ったみちるがあまりに可愛くて、僕は思わずみちるを抱き寄せた。
優しくキスをして、言う。
「もう絶対、悪い夢なんて見させないから」
みちるがずっとずっと甘い夢の中にいられるように。僕はみちるのことを愛し続ける――。