はるかとみちるは、昨日せつなから聞いたばかりの内容を全員に話した。皆、その話を聞いて呆然とする。
「地球が……」
「十二月って……すぐじゃないか」
特にショックを受けたのはうさぎだった。
「そんな……クリスタル・トーキョーは……? ちびうさは……? 生まれないの? いなくなっちゃうの?!」
ショックでその場に膝をつき、震えた小さな声で呟く。衛がうさこ、と声をかけ、肩を抱いた。
先程まで同窓会のような楽しい雰囲気だった境内が、一気にしんと静まり返る。皆、何を話せば良いのか、どこから考えればいいのか迷い、何も口に出せずにいた。
しばらく経って沈黙を破ったのは亜美だ。
「みちるさん。みちるさんの鏡では何か見えないんですか?」
落ち着いた声でみちるに問いかけた。みちるは軽く顎を引き、首を横に振った。手に持っていた小さな鞄から深海鏡を取り出す。
「昨日せつなにこの話を聞いて鏡を覗いてみたの。でも、何も見えなかったわ」
みちるの回答に、そうですか……、と亜美は肩を落とす。
「じゃあ、せつなさんが未来のキングやクイーンと交信するとかして、クリスタル・トーキョーが存在するかどうか確認できないんですか?」
今度は美奈子がはいはいっ、と手を挙げて尋ねた。その問いにははるかが首を振る。
「研究が進んできた段階で、せつなが何度かキングやクイーンに連絡を取ろうとしていたようだが、ダメだったらしい。どうやら未来が変わりつつあるせいで、時空の扉にも歪みが生じ始めているようなんだ」
打つ手なしの回答に、皆再び絶望した表情となる。
「諦めてはいけないわ」
暗い空気を再び動かしたのはみちるだった。
「せつなは、私達の力を合わせればどうにかなるかもしれないと思ってこのことを教えてくれたの。まだ確実に未来がなくなってしまうと決まったわけじゃない。だから、諦めてはいけないわ」
凛とした声が響く。はるかも頷く。
「すでに地球は変化し始めている。このことは一般の人には伝わらないように慎重に研究を進めているらしいが、そのうち混乱が生じて、僕達以上に傷つく人が出てくるかもしれない。
だから僕達はそれに備えて冷静に対処しなければいけない。落ち込んでる場合じゃないぞ」
はるかが続けた言葉に、亜美、レイ、まこと、美奈子は顔を見合わせる。戸惑ってはいるが、覚悟を決めたような顔で頷き合った。
うさぎだけはしゃがみ込んだまま地面を見つめ、戸惑っている様子だ。目に涙を浮かべ、狼狽した顔で呟く。
「どうにかって……どうすれば……」
泣きそうな表情をしているうさぎの顔を、美奈子がしゃがみこんで覗いた。そして、その両頬をつまむ。
「いだっ!」
「うさぎちゃん! だぁーいじょぶだって! あたしたち、これまで何度地球の危機を救ってきたと思ってんの?」
明るい声で美奈子がうさぎを励ました。うさぎは目をぱちくりさせながら美奈子の顔を見る。頬をつままれた勢いで涙が溢れ出し、美奈子が摘んだ頬に流れ落ちた。
「……美奈子ちゃん」
「そうだぞ、うさこ。ちびうさは間違いなく俺たちの子どもとして生まれてくるんだ。諦めちゃダメだ」
黙って肩を抱いていた衛も、うさぎに声をかけた。
「そうようさぎ。あなたは未来のネオ・クイーン・セレニティよ?こんなところで終わってたまるものですか」
「諦めたらちびうさちゃんに会えないぞ」
「みんなで力を合わせれば、きっといい方法が思いつくわ」
レイ、まこと、亜美もうさぎに近づき励ました。うさぎは潤んだ瞳で皆の顔を順番に見つめる。
「みんな……」
うさぎは三人に助けられながら立ち上がった。顔を上げると、目の前にははるかとみちるが並んで立っている。
「うさぎ。あなたの力が必要よ」
「頼む。きっと僕たちならやれる」
うさぎは零れ落ちた涙を拭った。はるかとみちるの一言で、先ほどまでの泣きそうな表情から覚悟を決めたような表情に変化し、力強く頷いた。