それから数週間の間に、世の中は少しずつ、しかし確実に変わっていった。
十一月後半になっても異常な天候は続き、街中が溶けるほど暑くなったかと思えば、吹雪で凍りつくような寒さに襲われた。台風は日本列島に三つも上陸したし、洪水になるほどの雨にも何度か見舞われた。十一月の東京は本来晴れた日も多く過ごしやすいが、十一月らしいと言える日は一日としてなかった。
それらの異常は確実に人々の生活を蝕んでいった。
全国のあちこちで災害が発生し、多くの人々の生活が立ち行かなくなった。それも広範囲で多数の被害が出ているため、救助や復旧が追いつかず、多くの地域が混乱状態となった。
東京では直接的な被害は少ないものの、物流や経済に大きな打撃を受けた。そのため、多くのスーパーなどの小売店で品物が不足するようになった。スーパーは品薄になり、飲食店は規模を縮小せざるを得ない状況となった。
人々の間ではデマが流れたり、怪しげな新興宗教が流行ったり、人々の不安につけ込んだ詐欺事件が発生したりもした。
そんな状況の中、せつなは相変わらず研究所に籠もりきりでほとんど帰宅できていない。はるかとみちるが何度か差し入れや着替えの交換などのために研究所を訪れたが、状況は芳しくないようだった。
「正直なところ、状況は全く変わっていません。何しろ相手が大きい……天体ですから。一朝一夕でどうにかなる相手ではないんです」
せつなは疲れた表情で呟いた。合間を見て、クリスタル・トーキョーのキングとクイーンにもコンタクトを取ろうとしているが、やはりそちらも上手くいかないらしい。
時間だけが、一日一日過ぎていく。