ベッドルームに静けさが戻った。目の前にはぐちゃぐちゃに乱れたシーツの上に、それ以上に乱れ、花弁と蜜と精にまみれたみちる。二人それぞれの荒い息遣いが重なって響く。
はるかはみちると重なったままの姿勢で、呆然としていた。
「思い出したことがあるんだ」
二人の息が落ち着いてきた頃、はるかがぽつりと呟いた。
「僕は前世でも君を穢している」
みちるはハッとして顔を上げた。そして、先ほど見たビジョンを思い出す。あの瞬間にはわからなかったが、はるかの言葉に、あれが前世のウラヌスである可能性に思い至った。
「この身体はたぶん、前世のものだ」
はるかにはみちる以上に多くの記憶が見えていた。自分の身体がどういう状態だったか、そしてどういう経緯でネプチューンとの関係に至ったのか。あらゆる情報が突如として、脳内に蘇っていた。
「僕は二度も、過ちを犯してしまった」
拳を握り、座り込んだ膝に打ち付ける。パンッ、と腿の筋肉に拳が打ち付けられる音がした。
「そんな言い方しないで」
みちるが身体を起こし、俯くはるかを覗き込んだ。
「過ち、だなんて」
みちるには、はるかがそう表現する真意がわかっていなかった。しかしはるかは、俯いたまま拳を握りしめる。
これは過ちだ。僕たちは繋がってはいけなかった――口には出さなかったが、はるかが表情として浮かべる絶望感をみちるは感じ取り、それ以上何も言うことができなかった。
互いに愛と体温を感じ、幸せな時間を過ごすはずだったベッドルームは、重く暗い空気に満ちていた。乱れたベッドに深く刻まれた無数の皺と、愛し合った痕跡である染みは、消すことのできない記憶を表すかのようにはるかの視界を支配し続けた。