その日はその講義の時間以降、ウラヌスとネプチューンが顔を合わせることはなかった。いざ対面した時にどんな表情でどう話せばいいかわからないでいたネプチューンは、少しほっとしていた。
身支度を整え、自室のベッドに入る。今日一日会わなかったからと言って、明日もそうとは限らない。明日は何もなかったような顔をして話そう。ネプチューンがそう思って目を閉じた瞬間だった。
控えめにドアがノックされる音が響いた。この時間に部屋を尋ねてくるのは彼女しかいない。直感的にそう思い、ネプチューンは身体を起こした。一瞬躊躇ったが、すぐにドアに駆け寄り、薄く開けて来訪者を確認する。
「……ウラヌス」
ネプチューンが小さくその名を呼ぶと、ウラヌスはまっすぐにネプチューンを見つめてこくっと頷いた。
「ちょっと、いいかな」
ネプチューンがウラヌスを招き入れると、彼女はまっすぐベッドに向かい、当然のようにネプチューンが寝るために整えたそこに腰を下ろした。あまりに自然なその仕草に、ネプチューンは半分拍子抜けし、半分呆れてしまう。ネプチューンが今日一日、一方的に感じていた二人の間の壁を、彼女はあっさりと乗り越えて自分の領域に現れたようだった。
「どうして、ここに?」
「きみと一緒にいたいと思った」
おずおずと尋ねたネプチューンに、ウラヌスはネプチューンの瞳をまっすぐに見つめたまま即答した。ネプチューンは思わずたじろぎ、ベッドから距離を取ってその場に立ち尽くしていた。
一緒にいたい。その一言は、ネプチューンを強く揺るがせた。プリンセスのことで心に暗い闇を抱きかけたことも一瞬で吹き飛ばされ、高鳴る鼓動に取って代わられて、ネプチューンの心を支配する。
「……プリンセスじゃ、なくて?」
ネプチューンは思わず彼女の名を出してしまう。突然出された彼女の名に、ウラヌスはきょとんとして、オウム返しにその名を呟いた。
「プリンセス?」
ウラヌスも本心では、ネプチューンとの対面に胸が高鳴っていた。顔を合わせていない時にはまったく感じなかったが、ネプチューンを前にすると胸の奥底が疼くような、これまでに経験したことのないざわつきを感じるのだ。ましてや、そこで秘匿する任務に関わる彼女の名が出されたから、なおさら戸惑い、緊張感が高まった。素知らぬ振りをして答えたが、内心ではネプチューンがその名を出した意図が気になって仕方がなかった。
「ああ、ええと……今日の講義の時間に、珍しく気にしていたように見えたから」
「そうかな」
確かに、任務のことを聞かされてから彼女の姿を直接捉えたのは初めてで、つい気になって見てしまったかもしれない。ウラヌスは頬を掻き、誤魔化すように付け加えた。
「講義に来たのが久しぶりだったから。ちょっと驚いたって言うか」
「そう」
ウラヌスの言葉に納得したのかしていないのか、ネプチューンはその場に立ったまま俯いた。こんな話をするためにウラヌスはここに来たわけではないはずだろうと、ネプチューンが窺うように彼女を見つめていると、ウラヌスは不思議そうな顔つきで手を伸ばし、ネプチューンを招く。招かれるまま、ネプチューンはおそるおそるウラヌスに近づき、手を差し出した。ウラヌスはその手を取り、軽く自分の方へ引く。
「えっ」
軽い力だったが、ネプチューンはそのままウラヌスの胸の中に引き込まれた。彼女の身体は思いのほか温かく、ネプチューンの身体は火がついたように一気に熱くなった。無論それは、ウラヌスの温かさのせいではなく、ネプチューン自身から生まれた熱のせいに他ならなかったが。
「ウラヌス」
抱かれながら、ネプチューンは呟いた。彼女が今どんな顔をして自分を抱いているか知りたかったが、その表情を窺うことはできない。
「ずっと考えていたんだ」
ネプチューンの頭上から、ウラヌスが呟くのが聞こえた。それはネプチューンに話しかけるというよりは、独り言のようなささやかさでもあった。
「僕にとってきみが、どんな存在か。僕がきみにしたことが、僕にとって何を意味するか」
ネプチューンの脳内に、昨夜のことがフラッシュバックする。たった一瞬で蘇ったあの光景に、心臓がまた大きく音を立てて鳴り、痛いくらいに感じた。思わずウラヌスの服の裾をぎゅっと掴む。
「昨日きみにしたことを、他の人にすることはできないと思った」
ウラヌスの言葉は、スローモーションのようにゆっくりとネプチューンの耳に届き、頭の中で反響する。ネプチューンは顔を上げた。ウラヌスの美しい鼻梁は、真っ直ぐ部屋のどこかに向けられていたが、ネプチューンの動きに気づいたようで、ゆっくりと下に向けられる。ウラヌスの表情は毅然としていたけれど、瞳の奥は優しく、ネプチューンが初めて見る色をしていた。
「好き、という気持ちについて、僕はよくわからない。僕は今まで、戦いとか任務のことばかり学んできたけど、そういう気持ちの表し方や、考え方を知らずにきたから。昨日もきみがなぜ悲しそうにしているかわからなかった。
だけど僕はネプチューンの隣が一番安心するし、ネプチューンにしかキスはできないと思う」
ウラヌスの言葉は、本人のいう通り、気持ちの表し方を知らずに生きてきたからこそ、飾らないありのままの言葉であるように感じたし、だからこそ、ネプチューンの心を強く打ち、震わせた。
「もう十分……十分よ、ウラヌス」
心と連動して震える声で呟き、目を閉じる。涙が溢れてしまいそうだった。ウラヌスの胸元に押し付けようとした顔は、ウラヌスの指先で顎筋をなぞるように持ち上げられる。ネプチューンが戸惑って目を開けようとしたその瞬間に、ウラヌスはネプチューンに口付けた。
一瞬触れて離れた昨晩とは違い、確実に意思を持って寄せられた唇は、柔らかく熱を持っていた。自分が熱いのか、ウラヌスが熱いのか、それとも互いの唇が触れ合って溶けた結果なのか、それすらもわからないほど。ウラヌスと対面してからずっと続いていた胸の高鳴りはとっくにピークを超えて、頭がじんじんと痺れてしまいそうだった。
無知なウラヌスにキスの意味を教えたのはネプチューンだが、ネプチューン自身がキスをした経験があったかと言えば、答えはノーだった。ただ、愛情表現として唇を触れ合わせる、その程度のことと考えていたのに、こんなにも緊張し、熱くなるものなのだと、痺れてちぎれそうな頭で思っていた。
キスをしながら、ウラヌスは後ろに身を引いた。自然とネプチューンはウラヌスに凭れるように導かれる。ウラヌスの背面がベッドに着地したかと思えば、すぐさま天地が返され、気づけばネプチューンはウラヌスに組み敷かれていた。
唇が離れたので目を開けると、ウラヌスが上からネプチューンを見つめていた。いつも左右に流れていた淡い金髪が、自分に向けて下がるのを、ネプチューンは蕩けた瞳で見つめる。いつの間にかウラヌスにがっちりと捉えられ、逃げ場を失っているというのに、なぜかその時ネプチューンは、いつもと違う角度で見るウラヌスの顔と、そこにかかる淡く柔らかい前髪から目が離せなかった。
前夜のような否定的な表情と戸惑いがネプチューンにないことを悟ったウラヌスは、その姿勢のまま、もう一度ネプチューンに口付けた。
先ほどの一回のキスで、二人は魔法にかけられ、沼に引きずりこまれるよう、その行為に魅せられていた。触れ合うことがこれほどに甘く、優しく、心地よいものなのだと、初めて知ってしまった。
そしてそれは、二人を歯止めの効かない快楽の世界へと導く。
「ウラヌス……」
熱い吐息を残してウラヌスが離れた時、恍惚したようにネプチューンが呟いた。ウラヌスはその唇に、そっと人差し指を置く。
何も言うな。ただ、身を任せて。
そう言っているように見えた。ネプチューンは瞳を潤ませ、小さく頷く。ウラヌスはベッドに組み敷かれたネプチューンの首筋をそっと撫で、身体のラインに沿ってゆっくりと流れていく。豊かな胸のラインから腰へ。ネプチューンの肌の上を、電流が走るようにぞくりとした震えが伝った。
ネプチューンに触れながら、これは自分には存在しない身体の柔らかさと凹凸なのだと、ウラヌスは思った。ついこの前、クイーンから任務について聞かされる前には気にも留めなかった体つきの差異。ネプチューンは明らかに自分よりも肉質が柔らかく、胸は大きく張り出している。腰のくびれも自分のそれよりも深い。一瞬、自分よりもまるで戦闘向きではないと感じたが、彼女の戦い方はそもそも自分とは違って、力技を使うのではなく繊細な技と巧みな戦略が活きる動きだった。他の戦士について詳しくはわからないが、きっと体格や性格に合った戦い方というものがあるのだろう。初めて気づいたことだった。
「くすぐったいわ」
ネプチューンが頬を赤らめながら小さく呟いて、腰をくねらせたのが、なんだか可愛らしく感じてドキドキした。晒された白い首筋に向けて、唇を沿わせる。
「んっ……はぁ」
ネプチューンの熱い息遣いが、ウラヌスの耳許を掠めた。どこか苦しくも、決して嫌がっているようには聞こえないその声に、ウラヌス自身の吐息も熱くなったような気がする。なぜだろう、ネプチューンが喘ぐ声を、もっと聞きたいと思った。啄むように優しく、唇で首筋を撫でていく。
「ああ……ん、ふっ、あっ」
抑えるように小さな声が漏れた。ウラヌスはネプチューンの首筋に自らを埋めたまま、思わず笑みを溢してしまう。これまでに聞いたことのない彼女の声。自分の動きに反応して上げてくれる声。
もっと、聞きたい。
ちらりとネプチューンの表情を窺うと、頬を染めて唇を縫い合わせ、ウラヌスから逸らされて遠くを見つめる目には涙を浮かべているのがわかった。ウラヌスは彼女の頬に手を添え、唇に親指を這わせて低い声で囁いた。
「その声、もっと聞かせてよ」
「でも」
目を細めて請うウラヌスに、ネプチューンは首を振った。
なんだか、変なの。
ネプチューンはその違和感をうまく伝えられなかった。意志に反して発せられる声、身体の奥底から湧き上がる熱、鳴り止まない鼓動。いつもの自分とは違うが、それを素直にウラヌスに伝えたら変に思われるのではないかと思い、躊躇っていた。ウラヌスが聞きたいと言った声も、今のネプチューンにとってはこれまでに経験したことのない羞恥を感じるだけだ。
ウラヌスはそのまましばらくネプチューンを見つめていたが、やがて口元に笑みを浮かべた。明らかに困惑する自分の反応を楽しんでいると思えるその表情に、ネプチューンの背中にぞくぞくと何かが走るのを感じた。ウラヌスがこんな顔をするなんて。どこかショックを受けながらも、ネプチューンはウラヌスの表情になぜか見入ってしまっていた。もっとその瞳で見つめ、自分に触れて欲しい。ネプチューンの心は、羞恥と相反する想いで揺れていた。
やがてウラヌスは、ゆっくりと舐るようにネプチューンの身体を見つめてから、彼女の服の腰ベルトに手を掛け、するりと取り上げた。柔らかく締め付けのないゆったりとした衣服は、戦闘時以外のすべての時間、もちろん就寝時も含めて着用できるよう、王国から何着も支給されていたものだった。就寝前に緩く留められていただけのベルトが取り去られると、一枚布のような服を押さえる場所はなくなる。ウラヌスは裾をめくり上げ、中に隠されていたネプチューンの素肌に触れた。
「やっ……ウラヌス、何をするの」
「きみにもっと触れたい」
ウラヌスはネプチューンの腰を撫で、その上に待ち受ける柔らかい膨らみに触れた。大きな膨らみの先端はツンと尖っていて、そこに触れるとネプチューンがきゅっと目を瞑り腰を震わせるのがわかった。
「んっ……でもっ! ……あっ、はぁぁっ」
抵抗する暇も与えず、ウラヌスはネプチューンに愛撫を繰り返した。
内心では、このまま続けていいものか迷う気持ちはあった。しかし何かに突き動かされるように、ウラヌスは動き続けた。ネプチューンが恥じらい、このまま進むことを躊躇っているのは明らかだ。でもそれ以上に、羞恥に悶えながらも自分の反応に敏感に反応する彼女になぜか強く興奮を覚え、止めることができなくなっていた。
ウラヌスはネプチューンを、まるで壊れ物を扱うかのように慎重に触れた。ここでは戦闘で用いてきたパワーは一切用いない。むしろ戦いで求められてきたこととは真逆の所作が必要だ。
無意識に遮ろうとするネプチューンの手をそっと避け、ウラヌスは大きな膨らみに触れた。艶やかで張りのある双丘は、自分の持つそれとは全く異なる感触だ。手で柔らかくほぐすよう揉み、先端を撫でるように摘む。ネプチューンの息遣いが乱れ、声が漏れる。
「はぁ、ああ、ウラヌス……んっ」
身を捩り、逃れようとするネプチューンの手首を軽く抑える。嫌がるのであれば無理をさせるつもりはないが、彼女は恥じらいながらも決して悪い反応をしているようには見えなかった。どう続けようか考えたウラヌスは、指での愛撫を諦めて舌を転がすことにする。なめらかな素肌に舌を滑らせ、突起を口に含んだ。
「ひゃっ! あっ、だめ、ああっ……ウラヌスっ」
ネプチューンが高い声を上げたのでウラヌスは一瞬躊躇った。が、ゆるく押さえた手が解かれる様子はない。むしろネプチューンは自らの指をウラヌスに絡め、強く握り返してきた。だからウラヌスは、構わず行為を続けることにした。
ネプチューンの素肌は、触れていてとても心地よかった。ウラヌスは夢中でネプチューンの肌に吸い付いた。頭がぼうっとするほど強く興奮しているのに、彼女の素肌に触れるととても安心感を抱いた。ウラヌスの動きに反応して握り返されるネプチューンの手を、声を、ずっと感じていたいと思った。
そのままであればきっとウラヌスは、永遠にネプチューンとのふれあいを止められなかったかもしれない。しかしある瞬間、ウラヌスははたと気づいて顔を上げた。
自分の身体に、異変が起きている。
「……ウラヌス?」
軽く息をつきながらも、ウラヌスの動きが止まったことを訝しみ、ネプチューンもそちらを向く。ウラヌスは自分の下腹部を見つめていた。
身体が熱く、特に下半身にエネルギーが集中しているような気は、ずっとしていた。だが、目の前のネプチューンに夢中になっていたから、具体的な変化には気づけなかった。下腹部がネプチューンに触れ、初めて気づいたのだ。
ウラヌスはおそるおそる、そこに触れてみた。硬くて、熱い。自分の身体の一部がこのように変化するとは思いもよらず、驚いて手を引っ込める。
ウラヌスから解放されたネプチューンは、着衣の乱れはそのままに、ゆっくりと身体を起こした。ウラヌスが戸惑っている理由を悟り、目を見開く。しばし考えてから、ネプチューンもそこに手を伸ばした。
「ネプチュ……」
まさかネプチューンも同様にそこに触れてみようとするとは思わず、ウラヌスは驚いて身を引こうとした。が、ネプチューンが触れる方が若干早かった。布越しに触れられ、ウラヌスの意識は余計にそこに集中してしまう。なぜか急に、頬が熱くなった。
「あなたの身体は、わたしとは違うのね」
ネプチューンは驚くこともなく、ウラヌスから突き出るそれをじっと見つめ、撫でた。ウラヌスも任務について知らされるまで自分と他者の体つきの違いに気づかなかったのだから、ネプチューンもそうなのかもしれない。ネプチューンに撫でられ、ウラヌスのものは余計に大きく硬くなっていくように見えた。
ウラヌスはおもむろに自分の衣服のベルトに手を掛けて緩め、自分が着ていた衣類を取り去った。その下の肌着まで取り去って、一糸纏わぬ姿になる。露わになったウラヌスの姿に、ネプチューンは目を丸くした。
「きみのいう通りだ」
ウラヌスは固まったまま自分を見つめるネプチューンの衣服も、下から上に引き上げて取り去った。咄嗟のことに、ネプチューンは自らを抱くように前を隠す。
「僕の身体は、きみとは違っている」
ネプチューンはしばし、ウラヌスの身体に見とれていた。自分よりもやや引き締まった身体、膨らみのない胸元、突き出た下腹部のもの、全てが、ネプチューンが初めて見る他人の裸体だった。おそるおそる手を伸ばし、彼女の胸元に触れた。以前からウラヌスの胸の膨らみ方は自分よりも小さいことは気づいていたが、触れた時に感じる弾力と張りの強さに、改めて驚いた。
「綺麗だわ」
「えっ」
「綺麗よ。あなたの身体」
ネプチューンの口から自然と溢れでた言葉に、ウラヌスは戸惑った。まさか、自分の身体を見てそのように言われるとは思わなかった。
「きみこそ」
ウラヌスは再びネプチューンに口付けて、ベッドに押し戻した。再び自分の下に組み敷いて、優しく彼女の額を撫でてやる。
「きみの身体は美しい」
ネプチューンはウラヌスの下で、真っ赤に頬を染め、瞳を潤ませて頷いた。ウラヌスは、ネプチューンを愛おしむような手つきで抱きしめ、もう一度深い口付けを送る。貪るように夢中で行った先ほどのキスよりも、優しく撫で合うようなキスを。
ウラヌスはネプチューンに唯一残されていた肌着も取り、ふたりは共に素のままの姿となった。秘められていたネプチューンの内腿は、ウラヌスがパッと見てわかるほどに艶を放って濡れていた。羞恥で閉じられようとする脚の隙間をやんわりと広げ、ウラヌスは間に触れてみる。
「やっ……! やめっ……」
ネプチューンは抵抗しかけたが、ウラヌスの指が滑り込むほうが早かった。ややとろみのある蜜がネプチューンの秘部から流れ出すのを、指で触れてみる。温かくまとわりつく感触がした。ウラヌスはその後すべきことを想起して、頬と下腹部が熱くなるのを感じた。
ネプチューンは、この場所に自分を受け入れるのだ。彼女は温かい蜜を流し、自分を包み込む。そう思ったら、初めての行為であるにも関わらず、急に期待感が高まってしまう。
何度か指を滑らせ、目指すべき場所を確認する。ネプチューンは抵抗を示したが、ウラヌスがやんわりと脚を広げると、諦めたようにその場所を晒した。ウラヌスはネプチューンの身体に自らを寄せ、硬く突き出たものを押し当てる。狭い入口に向けて先端を挿し入れ、ぐっと押し進めようとした。
「んんっ! ああっ!! ウラヌス!」
突然受けた衝撃に、ネプチューンは驚いて叫び声を上げ、ウラヌスにしがみついた。ネプチューンの中は思ったよりも狭い。彼女から流れ出る蜜が潤滑油になっているが、すんなりとはいかなかった。目を瞑り涙を溢すネプチューンに、ウラヌスは宥めるようにキスをして額を撫で、ゆっくりと下半身を押し当てる。ネプチューンは鈍い痛みに顔を歪めた。
「ウラヌス……なにっ……してるの……」
「きみと僕が、繋がるんだ」
「繋がる……?」
「そう」
ネプチューンはそこでようやく悟った。先ほど初めて見た、自分とは違うウラヌスの身体の一部。あれが自分の中に入ってこようとしているのだと。自分の目で見て、触れたにも関わらず、いざそれを受け入れようとすると、思った以上に硬く大きく感じ、痛みを伴うものだと気づいた。
「辛い?」
様子を窺うウラヌスに、ネプチューンは素直に頷いた。ウラヌスは驚き、さっと身を引く。ネプチューンの身体は見た目上傷ついている様子はないが、ネプチューンが痛そうにしていたにも関わらず事を進めようとしてしまったことに、今さらながら強い後悔の念を抱いた。
「ごめん……そんなつもりじゃなかった。無理させたね」
ウラヌスは労わるよう、至極優しい声で言った。その表情は、普段の彼女からは到底考えられないほど穏やかだった。
余計な感情を排除した無の視線か、戦闘時の闘志漲る鋭い視線。ネプチューンが見てきたウラヌスの表情の多くは、そういった冷たさと痛さを孕んでいたから。
ネプチューンは思わずウラヌスに向けて手を伸ばす。
「ねえ……抱きしめて、くれる?」
ネプチューンが囁いた。ウラヌスは頷き、ネプチューンを優しく抱きしめる。
無理に繋がらなくても良いのだと、ウラヌスは思った。そもそもこれはネプチューンとすべき行為ではなくプリンセスとすべき行為である。そのことはウラヌスもよく分かっていたのだが、身体の奥底から湧き上がる熱が、彼女を衝動に駆り立てていた。
きっかけは――そう、前夜のキスだ。あの夜以来、止められない欲望が、ウラヌスの底に生まれてしまった。
しかし、これは想像以上に感情を揺さぶられる上に、相手に負担を強いる行為だとウラヌスは感じた。肉体的な負担はもちろん、精神的にも、だ。この王国の中では比較的距離の近いネプチューンにすら躊躇うのに、プリンセスに同じことができるのだろうか。ウラヌスに不安が過ぎる。
そういった雑念に囚われつつも、ネプチューンを抱きしめていたら、熱を持ちくらくらするほどだった頭と身体が、少し落ち着いてくるのを感じた。先ほどまで貪るように愛していた身体に、自らの頬を寄せてみる。柔らかく、触れると吸い付くような肌質は、まるで自分を寄せ付けて離さないつもりなのではないかと思うほど、ウラヌスの肌に馴染んだ。
「ねえ」
しばらくそのままふたりで抱き合っていると、ネプチューンが言った。ウラヌスが顔を上げると、彼女はやや覗き込むような視線で見つめ、再び頬を染めている。
「続き……しましょう?」
思いがけない言葉に、ウラヌスは目を丸くした。
「でも」
先ほどまで涙を流すほど痛がり、顔を歪め、堪えていたじゃないか。ネプチューンの提案は一瞬喜ばしく思えたが、ウラヌスは慌てて首を振った。
ネプチューンは愛おしげにウラヌスを眺め、優しく微笑んだ。
「確かに、ちょっと痛かったけど…………でもわたしは、あなたと繋がりたいと思って」
「ネプチューン」
ネプチューンのためを思えば、ここでもう一度彼女と繋がろうとするべきではないかもしれない。彼女はウラヌスの任務とは無関係だ。
ただ、一方でウラヌスは、任務のことを考えればこそ、ネプチューンとの経験が必要なのではないかとも感じていた。この任務は、力任せに、言われるがままに遂行できるものではないと思った。相手との息を合わせ、心の距離を縮め、慎重に行う行為だ。一度で成功できる保証はない。
つまりいまネプチューンと接する時間は、戦闘訓練と同じ。本番に備え、練習を積む時間。そう思うこともできた。
曲解すれば、クイーンからの命めいを守ることと、そこで知り得た情報を用いてネプチューンを抱き、練習することは、両立できると思っていた。なぜなら、クイーンは任務に関して秘密にするように言ったが、そこで行われる行為そのものを秘密にするようには言っていないからだ。そして先の通り、他の任務と同様にこれが必要な訓練と位置付けるのであれば、正当な理由だと考えられる。
もちろん、それをクイーンに確認し許可を取ったわけではないから、あとで何かしらお咎めを受けるおそれも、わずかながら考えていた。
だが、その危険を犯してでもネプチューンを抱きたいと思っていることも事実だ。頭の一部がまだ熱を持って麻痺していて、冷静な気持ちとネプチューンへの止められない衝動との間で、揺れ動いているようだった。
だけど。
ウラヌスはいま一度、ネプチューンの瞳の奥を覗き込んだ。彼女の瞳は、深い泉のように澄み、清く輝いている。
訓練であることを言い訳にして、ネプチューンに苦痛を強いて良いのか。いや、そもそも、ネプチューンにこの気持ちの昂りをぶつけることを、「訓練」という言い訳で済ませてしまって良いのか。ウラヌスが衝動に揺れ、ネプチューンの誘いを受けながらも、即座に決めきれない理由はそこにあった。
戦闘訓練であればネプチューン自身の訓練にもなり対等な関係と言えるが、この行為はウラヌスの得にしかならない。ネプチューンが望んでウラヌスと繋がりたいと言ったとは言え、そのあとに得られるものは痛みだけかもしれない。
そして何より、ウラヌス自身が、任務に関わるこの行為の意味に疑問を感じ始めていた。
相手と心を通わせ、感じ合うこと。
肌を触れ合わせ、愛おしむこと。
全てをさらけ出し、繋がること。
ネプチューンであればできると思った。ネプチューンだからしたいと思った。しかし、いくら任務の為とはいえ、プリンセスを前にして同じ気持ちになれる気が、到底しなかった。
この行為が精神的、肉体的痛みを伴うものだと知ったから躊躇っているわけではない。例えそれらを知らずとも、ネプチューンやプリンセスに対する気持ちは変わらなかっただろう。
「ウラヌス」
眼前でネプチューンが囁いた。自分を見つめたまま考えに耽るウラヌスを、現実に呼び戻そうとするかのように。
「あなたが何を背負っているか、わたしにはわからないわ。……でもわたしは、いま感じたことを伝えてる」
ネプチューンはウラヌスの頬に手を添え、それから首に腕を回して引き寄せた。耳許でネプチューンの声が響く。
「ウラヌスは、どうしたい?」
ネプチューンは純粋にウラヌスに希望を問うたのかもしれないが、柔らかく囁かれた声は、ウラヌスにとってひどく甘美な誘いに聞こえた。耳許から足先に向けて震えが走る。そして、一度治まりかけた身体の熱が再び湧き上がってくるのを感じた。
「僕は」
ウラヌスの全身の血液が、勢いをつけてサーっと流れ出したような気がした。それはウラヌスに対し、強い衝動となり、再び頭を眩ませる。
二人は再び口づけを交わした。そこに、互いに未知の領域へ足を踏み入れ、秘密を共有する誓いを感じ取る。
もう、引き返すことはできない。
ウラヌスはネプチューンの下腹部に手を伸ばした。まだ熱く、蜜がとめどなく溢れていることはすぐにわかった。
先ほどは撫でて確かめるだけだったその入口に、指を入れてみる。ネプチューンは一瞬顔を顰めたが、痛みはないようだった。長い指を、ゆっくりと奥へと進める。
彼女の中は狭く、指一本でも軽い締め付けを感じるほどだった。なるほど、これは彼女が痛がるのも当然だろうと、ウラヌスは反省する。中は柔らかく熱く、これまで触れてきたどんなものとも例えられない感触が、ウラヌスの指を包み込んだ。
「んっ……ふぅ……はあ」
軽く前後に動かしてみると、ネプチューンは小さく息をついた。痛みや苦しみを伴う息遣いではなく、ウラヌスが肌を愛でていたときの甘いため息に近い喘ぎ声。
「大丈夫?」
「ん、うん……」
ウラヌスの問いに、ネプチューンは潤んだ瞳で答えた。目を細めて、どこか恍惚とした視線でウラヌスを見つめている。
ネプチューンの様子を窺いながら、ウラヌスは何度か指を出し挿れする動きを繰り返した。最初は二人とも、その感覚が良いのか悪いのか、よく分からなかった。ウラヌスは熱く滾る濡れた道を行き来し、ネプチューンはウラヌスが出入りするのを、身体を固くして受け入れるだけだった。
「もう一本、挿れるよ」
ネプチューンの感覚が変わったのは、ウラヌスが彼女の中に挿れた指の本数を増やし、中を何度か擦られた時だった。
「んっ……あっ、なんだか……ちょっと」
「え?」
驚いて手を止めると、ネプチューンは頬を紅潮させ、ウラヌスを見つめ返した。
「急に、奥にきたような……その…………奥を触られて、すごく、ドキドキしたの」
表現に迷い、ネプチューンは恥ずかしそうに、目を泳がせながらウラヌスに伝えた。
「えっと、それは……よかった、ってこと?」
ウラヌスが躊躇いながら問うと、ネプチューン真っ赤な頬を一層濃く染めて、こくりと頷いた。
「そうか」
ウラヌスは安堵して、ネプチューンに優しくキスを落とした。それから再びネプチューンが反応した箇所に向けて指を動かす。
「あっ……うん、はぁ……ああっ、そこ……ん、んんっ……んあっ……そう……」
ネプチューンは、ウラヌスが好む鼻にかかる甘い声を上げ、腰を震わせた。目を瞑り軽く歪んだ顔は、迫りくる何かを堪えようとしているようで、なぜかウラヌスにはとても蠱惑的に見えた。
蜜はベッドを濡らすほどにあふれ出続けていた。ネプチューンの中も、柔らかさが増したように感じる。ウラヌスは一度指を引き抜いた。透明な糸がネプチューンの秘部とウラヌスとを繋ぎ、熱と甘い香りを放つ。
ウラヌスはもう一度、自分自身の下半身で息づくものを眺めた。再び熱を持ち硬くなったそこは、おそらくネプチューンの中に突き立てるには十分過ぎるほどに膨らんでいる。はち切れそうな様子を見ると、再度ネプチューンを傷つけてしまわないか恐ろしくなり、ウラヌスは躊躇った。
沈黙を破ったのはやはりネプチューンだった。軽く身体を起こすと、ウラヌスの下半身に触れる。熱さと硬さを確かめるように下から上に撫でたあと、ウラヌスの首に腕を回し、囁いた。
「いいわ……来て」
ネプチューンに促され、ウラヌスはゆっくりと、下腹部をネプチューンに当てがった。先端部が泉に触れると、先ほどよりも一層そこが満たされ沼のようになっていることを感じる。ネプチューンが自分を受け入れる準備ができているのだ。そう感じた。
確かめるような視線をネプチューンに向けると、彼女は小さく頷く。ウラヌスも小さく顎を引いて返し、ネプチューンの中に自分を埋めていった。
中はやはり狭かったが、先ほどよりもスムーズに進むのがわかった。とは言え、指よりは余程太く、ネプチューンが僅かに顔を歪めるのがわかる。ウラヌス自身も、ネプチューンに包まれるにつれ昂まる刺激に、息が上がりそうだった。荒く息を吐きながら、二人は時間をかけて一体になる。ウラヌスが完全にネプチューンの中に入った時、長く溜めていた重い息を吐き出した。
「繋がった、の……?」
ネプチューンが薄目を開けて尋ねた。ウラヌスは頷く。
「僕たちは、ひとつになったんだ」
そのままにしていても十分に心地良さを感じるほどだったが、ウラヌスは意を決して腰を前後に動かし始めた。ネプチューンの中で自分のものが擦れ、優しく抱いだかれるような感覚になる。急激に訪れた快感に、ウラヌスは思わず顔を歪め、苦しげな声を出す。
「うっ……ああ……すごい」
「ウラ、ヌス? 大丈夫?」
下から心配そうに覗き込むネプチューンに、ウラヌスは口を歪めて苦笑いする。
「ネプチューンの中が……あまりに、気持ちよくて」
ウラヌスの言葉に、ネプチューンは目を丸くする。
「きみの中は、すごく温かくてよく締まっていて……動くと、僕のものを締め付けるんだ。それがすごく気持ちいい」
「やめてウラヌス、恥ずかしいわ」
真っ直ぐに紡がれた言葉に、ネプチューンはいやいやと首を振って手で顔を覆った。ウラヌスが自分の中で心地よさを感じているのが嬉しいのに、言葉にされるとなんだか恥ずかしかった。
「隠さないでネプチューン。……きみは、どう?」
指の隙間から、ネプチューンの蒼い瞳がちらりと覗く。
「わたしは……よく、わからないの」
躊躇いがちに、ネプチューンは言った。
「すごく熱くて大きくて……わたしの中をいっぱいにしてるの。あなたと繋がってる感じがする……だけど」
ネプチューンにとってそれはまだ異物感に近いもので、気持ち良いことなのかどうかはわからなかった。ただウラヌスと繋がり、彼女で満たされていることは、喜ばしいと思っていた。
それをはっきりとウラヌスに伝えても良いのかどうか、言葉に迷い戸惑っていたネプチューンの頬に、ウラヌスはそっと指を滑らせ、微笑んだ。
「いいさ、初めてのことだから。……ただ今は、僕を感じて?」
二人はまた唇を重ね、身体を密着させた。ウラヌスはまた、ゆっくりと腰を動かし始めた。触れ合う箇所は汗なのか蜜なのかわからないほどにしっとりと濡れている。結合部からはぐちゃぐちゃとネプチューンの中をかき混ぜる音がする。
「あっ……はぁ……あ……」
ウラヌスは頭がかすみそうなほどの刺激に、思わず息を漏らした。ただネプチューンと繋がりたい、その一心だったのに、いつの間にか目の前の彼女しか見えなくなり、快感の波に溺れそうになっている。ネプチューンに気を配る余裕がなくなってしまわぬよう、意識を保つことに必死だった。
ネプチューンも、ウラヌスが中で動くのを精一杯に感じていた。痛みは感じなかった。ただ、ウラヌスが動くたびに彼女の存在を自分の奥に強く感じ、身体だけでなく心も射抜かれるような感覚がしていた。このまま射抜かれ続けたら自分はどうなるのだろうと、彼女の首にすがりながら思う。
腕の先に感じる、自分よりも少し広くしっかりと筋肉のある背中。先ほど触らせてもらった凛々しい胸の下に抱かれているのだと思うと、より一層身体が熱くなった。
「ウラヌス……あっ……んっ……ウラ……ヌス」
「あっ……はぁ……ああ……ネプチューン」
ウラヌスの名を呼ぶと、彼女も名前を呼び返す。そして掠めるようにキスを落としていく。ネプチューンが薄く目を開けて彼女の表情を窺うと、金色の前髪の隙間からうっすらと翠の瞳が覗く。夢中で腰を打ちつけ、自分を求める姿。自分を精一杯に感じている姿。ネプチューンの視線に気づくと、喘ぎながらも穏やかな視線を投げかける。
ウラヌスの瞳も、必死に自分を呼ぶ声も、美しく、愛おしいと思った。彼女に求められることが、ネプチューンは心の底から嬉しかった。
「ウラヌス……きて」
彼女を受け入れると決めた時と同じように、ネプチューンはウラヌスに促した。回した腕にきゅっと力を込める。ウラヌスが頷いたような気がした。
ウラヌスが、少し動きを強く、速くした。ネプチューンの中の、奥深くまで彼女が届くのがわかる。ネプチューンは思わず息を詰まらせ喘いだ。
「んっ……ああっ、ウラヌス……ウラヌスッ!」
「ネプチューン……はぁっ……あっ……ぐっ」
ウラヌスも苦しそうに息を吐くと、その瞬間、ネプチューンの中が強く突かれるのを感じた。ウラヌスの腰が痙攣するかのように震える。 そして、熱く硬い先端から、何かが放たれた。ネプチューンの中が、熱いもので満たされる。
ウラヌスは動きを止めた。荒く息づき、先ほどまでネプチューンをしっかりと抱いていた腕からは、力が抜けていた。それでもまだ、中では硬く熱いものがひくひくと動くのを、ネプチューンは感じていた。汗がひとしずく、またひとしずく、流れて落ちる。
ウラヌスは軽く息を整えてから、ゆっくりとネプチューンの中から自身を引き抜いた。とろりと中から白く混濁した液が溢れ出す。
ウラヌスの欲望が形となって吐き出されたもの。ゆっくりとネプチューンの秘部から下に伝うのを、ウラヌスはぼんやりと見つめていた。
プリンセスに注がれるはずの命の源。ウラヌスからほぼ無限に生まれ、時が来たら世継ぎのために使われる。
ただ、その最初の一回を、ウラヌスは目的外に放出してしまった。
もう一度、プリンセスに対し同じことができるのか。
今日幾度となく頭を巡った不安が、再び蘇ってきた。少なくとも今のウラヌスの中には、もう力は残っていないように感じる。
「ウラヌス……」
呆然と俯くウラヌスは、ネプチューンの声でこの瞬間に引き戻される。
「ネプチューン」
頭に浮かんでは消えるざわざわとした気持ちを誤魔化すかのように、ウラヌスは口付けをした。つい先ほどまでの熱を思い出す、甘く柔らかい口付け。ウラヌスの不安も雑念も、ゆるみ、ほどけて、なくなっていくような心地がした。
今はもう少しだけ――ネプチューンと過ごす時間の余韻に浸っていたい。
身体を起こしかけていたネプチューンと共に、ウラヌスは再びベッドに沈む。首を傾ければ、はにかむネプチューンが見えて、ほっとする。ウラヌスは頬を緩め、ネプチューンの滑らかな肌を撫でた。
水中を漂うように柔らかく、二人は抱き合い、温もりを感じた。この時間が永遠に続けば良いのにと、二人とも思っていた。
明日からまた、いつも通りの日常を過ごすのだろう。いつ来るかわからない敵に備えて訓練に励み、月の歴史を学び、任務が与えられればそれをこなす。
だけど、今日までの日々と違うのは、二人だけの秘密を共有したこと。心と身体を明かしたパートナーができたこと。
そのことはきっと、自分の大きな支えになる。
いつの間にかネプチューンの息遣いは、小さく深いものに変わっていた。見ると、目を閉じ眠っているようだ。口許を緩ませ安心しきった顔に深い愛おしさを感じ、ウラヌスはネプチューンを優しく抱き寄せ、自らも目を閉じる。
とくりとくりと、二人の鼓動が重なる音を聴きながら、ウラヌスは次第に深い場所に落ちていった。
それは彼女が今までに感じた中で一番優しく穏やかな眠りだった。