はるかはベッドサイドの小さな灯りを付けた。暗かった寝室に温かみのある光が灯る。
一日の心労と先ほどまでの行為により心身は疲れ果て、本来であればそのまま眠りに落ちてしまうところだったが、重要な事柄を思い出した今、とても眠れる状況ではなかった。
「女性ばかりの月の王国で、どうやって世継ぎが生まれていたか、知っているか」
不意に、はるかは呟いた。前世に関する唐突な質問に、みちるは戸惑った。これまでは自分の方がはるかよりも前世の記憶を色濃く持っている認識で、はるかに前世について問われることなど一度もなかったのだ、なのに。
黙って見つめるみちるに、はるかは言った。
「宿命の戦士という者がいたんだ」
はるかのその言葉を聞いた瞬間、みちるは、開けてはいけない箱を開けたような気持ちになった。深い翠の瞳の奥には、知ってはいけない真実が沈んでいるような気がした。思わず息を呑む。
はるかはみちるから目を逸らし、遠くを見つめた。遠い過去の記憶を思い出すかのように。