弾き慣れた曲を一曲演奏し終わり、みちるが目を開けると、乾いた拍手が部屋に響いた。
「見事だったよ、みちる」
微笑んで近づいたはるかに、みちるは曖昧な笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、ありがとう」
みちるの表情に、はるかは軽く眉尻を下げた。
「無理はしなくていい。君のヴァイオリンの腕が損なわれていないことがわかっただけでも安心したよ」
明るく笑って見せるはるかに、今度は何も言わずに肩をすくめ、みちるは部屋から出て行ってしまった。
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