駐車場に戻る頃には、すっかり陽が落ちて空気も冷え込んでいた。そのせいか、並んで歩くふたりの距離も自然と縮まる。
今日、はるかとみちるはしばらく過ごしたあの街を出る決意をした。土萠ほたるを彼女の父親の元に返し、月野うさぎをはじめとする内部太陽系戦士たちとの別れを経て、ふたりきりで街を出た。
そして、つい先ほど、それぞれの気持ちを改めて確認しあったばかりだ。
これまでのふたりの様子を見てきた者が聞けば驚く話ではあるかもしれないが、ふたりは先刻まで恋人同士ではなかった。公然と肩を寄せ合って歩き、意味深長な台詞で周囲を惑わせ、戦いの場では息ぴったりに互いの背中を預けて戦っていたにも関わらず、だ。
ふたりにはずっと、命を賭して守らねばならない使命があった。恋愛にうつつを抜かしている場合ではなかったし、何よりも、未来が無事であるかどうかもわからない状況下で、将来の仲を誓うことのリスクも大きかった。
それでも、戦いの合間のわずかな息抜きかのごとく、そういうパフォーマンスをするほうが都合がいいから、と、あえて恋人同士のようなやりとりを楽しんでいた節もあったわけだけれど。
ふたりが揃って街を出て、この先に行く道を決めるために、互いの気持ちと関係性をはっきりさせる必要があった。だからはるかはここで車を停め、みちるに自分の気持ちを告白をし、みちるはそれを受け入れたのだった。
ふたりは今、幸せに満ちた表情で歩いていた。
ふたりを邪魔するものは何もなかった。