画像4枚の下にテキスト形式の本文を掲載しています。
温かい布団の中で、相手の温もりを抱きながら微睡むのは、風呂で温かい湯に浸かってリラックスする時間にも似ているし、はたまた明確には憶えていないはずの、温かい母体の中でゆらめきながら誕生を待っていた胎児の頃の記憶をくすぐられるような気もする。はるかが腹を抱えるように軽く身を縮めると、隣で同じように微睡むみちるが、深く息を吐き出すのが聞こえた。その呼気はまだ、熱を持っているように感じる。
二人はつい先ほどまで互いの身体に隈なく触れ合い、その熱と柔らかさを感じ、それぞれが相手の指先により高みに導かれていた。
互いの気持ちを煽りながら、熱く燃えるように抱き合う夜もあれば、優しい言葉で愛で合いながら穏やかな時間を過ごす夜もある。今晩は後者だった。二人の睦み合いは前者のような流れであることが多いのだが、実際のところはるかは、どちらのパターンも好きだった。
緩やかに昂まる情動とともに、相手の身体を心ゆくまで堪能し、ゆったりとした時の流れを感じる。二人の歩む時は永遠であり保証されたものだと感じられる時間だ。これは、二人がまだ使命に身を投じていた時には到底考えられなかった、優しく甘く、心を溶かす柔らかな時間。
はるかの髪が、するすると指で梳かれるのを感じた。
「みちる……」
目を閉じたまま思わずそう溢すと、みちるの口付けが額に降ってきた。
「どうしたの、甘えん坊さん」
くすくすと笑う彼女の口調は柔らかく穏やかで、はるかの身体と心に染み込む気がした。うっすらと目を開けてみると、暗がりに碧く光るみちるの瞳が見える。
「もっと……」
はるかがつぶやいて、伸ばした指でみちるの髪を梳く。そのまま彼女の頭部を自らの元に引き寄せ、唇を触れ合わせた。
今夜みたいな日は、甘えん坊とからかわれても否定しない。むしろはるかは心ゆくまで甘えるつもりでいたし、みちるのことも思い切り甘やかしたいと思っている。それはみちるも同様で、二人ははっきりと口に出さずとも、今宵は互いの腕に溺れ、溶け合おうと決めている日なのだ。
すでに隔てるものがなくなっている二人の身体は、数十分前の睦み合いを繰り返すかのように、腕から下腹部、足にかけて順々に布団の中で組み合った。ちゅっちゅっ、と優しく啄むような口付けを繰り返しながら、ただ互いの身体の温もりと鼓動を感じる。二人の身体の奥底には新たな熱が生まれるが、身を焦がし情動に揺さぶられるような熱さではない。例えるならばそれは、燻りゆらめく蝋燭の火が、じわじわと蝋を溶かしていく過程のようだ。
重なり合う胸元に、どちらからともなく指先で優しい愛撫を行う。乱れる息遣いと指先の動きが呼応する。
「はるか……」
夢の中を揺蕩うような甘い声で、みちるが囁いた。
「ん……みちる」
同じくらいの甘さを湛えた口付けではるかは応える。
熱い息が重なり、二人のいる小さな空間が温まっていく。溶けて混じり合う、湿り気のある中心部。一体になることを感じる瞬間。はるかがみちるの、みちるがはるかの、それぞれが好む場所を探り合う。二人の鼓動と息遣い、たまに囁かれる請い求めるような喘ぎ、重なる小さな水音。静寂の中でただそれだけを感じ、二人の感情の昂まりに集中する時間。普段であれば恥ずかしくて口にしない甘い愛の囁きも、今日は雨のようにこぼれ落ちてくる。
指先に、温かく柔らかな締め付けと微かな震えを感じる。空いた腕を首に回し、みちるが囁いた。
「ねぇ……一緒に」
「――ああ、もちろん」
乱れた呼吸とタイミングを合わせて。最後の瞬間は一緒に――。